顧問先への訪問において、「売上を上げたい」といった非常にざっくりとしたオーダーを受けることがあります。
この様な状態から、物事を整理し、やるべき事項をまとめ、プロジェクトを起こすことが私の業務ではありますが、はじめの段階で、目標(あるべき姿)をはっきりさせ、合意を得ておかないとその後の方向性が全く異なってまいります。

なぜなら、売上を現状の1.2倍にする場合と、2倍にする場合では明らかにやるべき内容やボリューム感が異なるからです。

1.2倍であれば、フォアキャスティングと言われる様な、今までやってきた業務の積み上げで実現しそうな範囲ですので、業務を効率化する事で多くの業務をこなしたり、少しターゲット層を広げる(エリア、業界など)事が考えられます。

しかし、2倍などにしたい場合は、今までの積み上げでは到底達成出来ないことになりますので、新たな考えを取り入れなければなりません。
この様な場合は、現実的に出来る業務だけで考えるというよりは、バッグキャスティングと言われる様な、あるべき姿に到達するためには、何が必要なのか、未来志向で考えていく事が必要になります。話題になっているSDGsなどもそうですが、出来る出来ないという範疇を超え、何が必要かを考えていく事が重要と言えます。

それでは、目標(あるべき姿)をはっきりさせ、対策を練っていくためには、どの様な議論が必要か少し整理したいと思います。

なぜその目標を立てるのか
多くの経営者は、当然事業を拡大したいと思っていると思います。資本主義では当たり前の事かもしれません。しかし、根拠なく難しい目標を立てたところで、実現は難しいでしょう。

そもそも、売上とはお客様に対して役に立った対価として生まれるものが通常です。そのため、どれだけのお客様に、役に立つサービスを届けたいのかという視点があるべきで、自社の収益を第一に考えてしまうと、事業を行う意味すら分からなくなってしまいます。

その状態だと、お客様のためにサービスを販売するより、売上を上げるためにサービスを販売する(結果的にお客様のためにならない事も含む)事になりかねません。事実そういう会社も多いですが、何のために働くのか疑問を抱く従業員が増え、モチベーションが下がる事で、結果的にいい方向に向かわない様に思います。

お客様への品質を保ちたいために、サービスの量を限定して、横ばいの売上を目標としている企業もありますが、それはそれで素晴らしい事だと思います。

そのため、なぜその目標が重要なのか、経営者とはっきりさせる事が大切です。

なぜそれを課題と感じているのか
立てた目標に対して、現状と比較するとギャップが見えてきます。そのギャップがあるのはなぜか、課題を明らかにする事が必要ですが、多くの場合、抱えている課題も何となくと言った認識で、数値に基づいたものでない事が多いです。

ギャップを埋めるために○をしようと、いきなり対策を練るのではなく、まずはなぜその課題を課題と捉えているのか、本当にそうなのかを調査してみないといけません。そうしないと、課題が間違っていた場合に対策も間違ってしまい、無駄な作業を行ってしまいます。

例えば、売上が到達しないのは、新規開拓が出来ていないからだ。と認識していても、実は主要ターゲットにはアプローチ出来ていたけど、受注出来ていない・受注率が低いのであれば、新たに開拓するよりは、どう受注率を上げていくのか、サービスや提案方法の改善が有効的な場合もあるのです。

上記の様な議論を始めにしておく事で、無闇な営業戦略を立てて失敗する事も少しは回避出来ますし、「なんとなく経営」を排除していく事で、良かった点・悪かった点を振り返り出来る様になります。そうする事で、徐々に業務の精度を上げ、利益向上に繋がる組織づくりが出来るのではないかと思います。

これら以外にも、必要な事も多いですが、あるべき姿への道筋を作る手順として、「なぜ」という質問を投げかけて議論を深める事が重要です。